軟部多形性悪性腫瘍の病理診断

更新日:2011年09月26日
掲載日:2011年09月26日
1.はじめに  2.良性腫瘍  3.悪性腫瘍  4.その他  5.参考文献

1. はじめに

軟部腫瘍は組織像が極めて多彩であり、細胞診や生検のみでは組織型の確定ができないことや、良悪性の鑑別すら困難な腫瘍が多くある。切除標本の最大割面を組織学的にくまなく評価して初めて確定診断にたどり着けるというものも多い。特に軟部多形性腫瘍では、確定診断に難渋するものが多い。一般的には腫瘍細胞の核の大小不同が著しい、いわゆる腫瘍細胞の多形性は悪性腫瘍の特徴であるが、軟部腫瘍においては、悪性腫瘍のみならず良性腫瘍にも顕著な多形性を示すものがあり、これらを悪性と診断しないことも重要である。本稿では悪性腫瘍のみならず、多形性良性腫瘍についても解説する。軟部腫瘍の診断には組織像に加えて年齢や発生部位も重要な判断材料となる。


特異的な染色体転座とそれに対応するキメラ遺伝子を有する軟部肉腫の腫瘍細胞に多形性は乏しく、腫瘍細胞の形態は比較的均一である(滑膜肉腫、骨外性Ewing肉腫、胞巣型横紋筋肉腫、明細胞肉腫、粘液・円形細胞型脂肪肉腫など)。これに対して特異的な染色体転座を有しない軟部肉腫では、広範に多形性を示す亜型が存在するものや(多形型平滑筋肉腫など)、腫瘍全体が顕著な多形性を示すものが多い(未分化多形肉腫、多形型脂肪肉腫など)。本手引きでは悪性腫瘍と鑑別を有する良性腫瘍も含めた代表的な多形性軟部腫瘍について、その組織学的および免疫組織学的特徴とその臨床像についても解説する。


表. 多形性軟部腫瘍の特徴的な組織像と免疫組織化学的マーカー

組織型 特徴的な組織像 マーカー
良性腫瘍
紡錘形細胞/多形性脂肪腫 Floret様多核巨細胞、小型紡錘形・円形細胞の混在、肥満細胞 CD34
多形性硝子化血管拡張性腫瘍 拡張した血管、血管壁のフィブリン変性、血管内の器質化した血栓、核内封入体 CD34
多形性の顕著な神経鞘腫 紡錘形細胞の柵状配列、血管壁の硝子化 S-100蛋白
悪性腫瘍
悪性孤立性線維性腫瘍 血管周皮腫様の血管、紡錘形・卵円形細胞 CD34, bcl-2
高悪性度未分化多形肉腫 高度多形性、異型巨細胞、花むしろ状配列 特異的マーカーなし
巨細胞を伴った未分化多形肉腫 破骨細胞型多核巨細胞、多結節性発育、類骨 特異的マーカーなし
顕著な炎症を伴った未分化多形肉腫 高度の炎症細胞浸潤、Cytophagocytosis 特異的マーカーなし
粘液線維肉腫 豊富な粘液状基質、細長い曲線状血管、偽脂肪芽細胞 特異的マーカーなし
脱分化型脂肪肉腫 分化型脂肪肉腫成分の存在 MDM2, CDK4
多形型脂肪肉腫 大型脂肪芽細胞 S-100蛋白 (33%)
多形型平滑筋肉腫 酸性細胞質、一部に通常の平滑筋肉腫の像 Desmin, MSA, SMA, h-caldesmon
多形型横紋筋肉腫 好酸性細胞質、横紋筋芽細胞 Desmin, MSA, Myogenin
骨外性骨肉腫 腫瘍性類骨 特異的マーカーなし
悪性末梢神経鞘腫瘍 疎密配列パターン S-100蛋白(部分的)
その他
肉腫様癌、多形性癌 上皮性分化 Cytokeratin, EMA
未分化大細胞型リンパ腫 腎臓形あるいは馬蹄形核 CD30, ALK
悪性黒色腫 明瞭な核小体、メラニン色素 S-100蛋白, HMB45, Melan-A

MSA: muscle specific actin, SMA: smooth muscle actin


2. 良性腫瘍

1) 紡錘形細胞/多形性脂肪腫 Spindle cell/pleomorphic lipoma(表)
図1:紡錘形細胞/多形性脂肪腫の組織像。成熟脂肪細胞とともに多形性細胞とFloret-typeの巨細胞を認める。
図1:紡錘形細胞/多形性脂肪腫の組織像。成熟脂肪細胞とともに多形性細胞とFloret-typeの巨細胞を認める。

中高年の項部から肩にかけての皮下に好発する。紡錘形細胞脂肪腫と多形性脂肪腫は、以前、良性脂肪性腫瘍の中で別の亜型として取り扱われてきたが、両者の間には移行像があり、現在では同一範疇の腫瘍として認識されている。組織学的に紡錘形細胞脂肪腫は成熟脂肪細胞と紡錘形細胞が種々の割合で混在し、ロープ状の膠原線維を伴う。散在性に肥満細胞の出現も認められる。紡錘形細胞脂肪腫の組織像に加えてFloret-typeの巨細胞出現が目立つものがあり、これが多形性脂肪腫と呼ばれてきた(図1)。免疫染色では紡錘形細胞および多核巨細胞ともにCD34が陽性となる。鑑別診断には分化型脂肪肉腫が挙げられるが、本腫瘍の脂肪は成熟脂肪で大小不同はなく、核の濃染する異型細胞は認められず、発生部位も表在性で皮下である。


2) 多形性硝子化血管拡張性腫瘍 Pleomorphic hyalinizing angiectatic tumor (PHAT)(表)
図2A:多形性硝子化血管拡張性腫瘍の組織像。A)紡錘形腫瘍細胞とともに多形性の顕著な腫瘍細胞を認め、一部の細胞には核内封入体を認める。
図2A:多形性硝子化血管拡張性腫瘍の組織像。A)紡錘形腫瘍細胞とともに多形性の顕著な腫瘍細胞を認め、一部の細胞には核内封入体を認める。

図2B:多形性硝子化血管拡張性腫瘍の組織像。B)本腫瘍に特長的な拡張した血管と血管壁のフィブリノイド変性。
図2B:多形性硝子化血管拡張性腫瘍の組織像。B)本腫瘍に特長的な拡張した血管と血管壁のフィブリノイド変性。

成人の下腿の皮下に好発する。2002年のWHO分類では分化不明腫瘍の良性の範疇に分類されているが、再発率が高いことより、最近では中間悪性の腫瘍と考えられている(1)。 腫瘍は紡錘形細胞および顕著な多形性を示す細胞よりなり、核内封入体を有する(図2A)。核分裂像はまれである。特徴的な拡張した血管と血管壁のフィブリノイド変性を認め(図2B)、しばしば器質化した血栓を伴う。多形性細胞も含めて腫瘍細胞はCD34に陽性となる。多形性を示す神経鞘腫や未分化多形肉腫(悪性線維性組織球腫MFH)が鑑別診断に挙げられるが、本腫瘍はS-100蛋白に陰性であり、核分裂像を認めることはほとんどない。


3) 顕著な多形性を示す神経鞘腫 Schwannoma with prominent nuclear pleomorphism(表)
図3A:多形性の顕著な神経鞘腫の組織像。A)紡錘形腫瘍細胞の中に多形性腫瘍細胞を認め核内封入体も伴っておりPHATの組織像に類似する。
図3A:多形性の顕著な神経鞘腫の組織像。A)紡錘形腫瘍細胞の中に多形性腫瘍細胞を認め核内封入体も伴っておりPHATの組織像に類似する。

図3B:多形性の顕著な神経鞘腫の組織像。B)血管周囲の硝子化を認める。
図3B:多形性の顕著な神経鞘腫の組織像。B)血管周囲の硝子化を認める。

通常の神経鞘腫に変性による変化の1つとして、顕著な多形性を認めることがある(図3A)。多形性を有し核濃染性であることより、未分化多形肉腫や悪性末梢神経鞘腫瘍との鑑別が問題となることがある。変性を伴った神経鞘腫では血管壁の硝子化を伴うことが多く(図3B)、Antoni AとBの部位も認められることが多い。また核分裂像はほとんど認められない。免疫染色では多形性腫瘍細胞も含めてS-100蛋白がびまん性に陽性となる。 未分化多形肉腫では核異型がより高度であり、核分裂像も多数観察され、S-100蛋白は通常陰性である。悪性末梢神経鞘腫瘍ではS-100蛋白がびまん性に陽性になることは少なく、部分的に陽性像を示すか陰性のことも多い。血管の硝子化は通常認められない。


3. 悪性腫瘍

1) 悪性孤立性線維性腫瘍 Malignant solitary fibrous tumor(表)
図4A:悪性孤立性線維性腫瘍の組織像。A)大小不同の卵円形腫瘍細胞の中に奇怪な核を有する腫瘍巨細胞を認める。
図4A:悪性孤立性線維性腫瘍の組織像。A)大小不同の卵円形腫瘍細胞の中に奇怪な核を有する腫瘍巨細胞を認める。

図4B:悪性孤立性線維性腫瘍の組織像。B)血管周皮腫様の血管を多数認める。
図4B:悪性孤立性線維性腫瘍の組織像。B)血管周皮腫様の血管を多数認める。

通常の孤立性線維性腫瘍の組織像の中に多形性を有する腫瘍細胞が出現する(図4A)。紡錘形あるいは卵円形細胞の無秩序な配列パターン(patternless pattern)と、その間の膠原線維、および血管周皮腫様の鹿の角様に分岐した血管を認める孤立性線維性腫瘍の基本像(図4B)に加えて、細胞の密な増殖、中等度から高度の細胞異型、多数の核分裂像(>4/10HPF)、腫瘍壊死、浸潤性発育のいずれかを伴うものが悪性とされている。組織学的な悪性例と通常例との間に生物学的態度に有意な差異は認められないという報告が多い(2、3)。免疫染色でCD34およびbcl-2が陽性となる。血管周皮腫様の血管を有する未分化多形肉腫(MFH)が鑑別に挙げられるが、CD34がびまん性に陽性となることはない。


2) 未分化高悪性多形肉腫 Undifferentiated high grade pleomorphic sarcoma/多形型悪性線維性組織球腫 Pleomorphic malignant fibrous histiocytoma(表)
図5:未分化多形肉腫の組織像。多形性を有する多角形および短紡錘形腫瘍細胞の中に腫瘍性巨細胞を認める。
図5:未分化多形肉腫の組織像。多形性を有する多角形および短紡錘形腫瘍細胞の中に腫瘍性巨細胞を認める。

かつては軟部肉腫の中で最も頻度の高い組織型とされていたが、近年の免疫染色の発達などで腫瘍の特異的な分化を証明することが可能となり、多形型平滑筋肉腫や脱分化型脂肪肉腫をはじめとした特定の分化を有する他の軟部肉腫に診断されるようになったため、その頻度は減少している (4)。中高年の四肢深部軟部組織に好発し、予後は不良で5年生存率は50〜60%程度である。組織学的には未分化な多形性腫瘍細胞が異型紡錘形細胞を交えながら特定の配列傾向を持たずに無秩序に増殖する(図5)。腫瘍細胞が花むしろ状に配列(storiform pattern)することもあるが、本腫瘍に特異的なものではない。免疫染色では特異的なマーカーはないが、muscle specific actinなどの筋線維芽細胞のマーカーが部分的に陽性となることがある。


3) 巨細胞を伴う未分化多形肉腫 Undifferentiated pleomorphic sarcoma with giant cells/巨細胞性悪性線維性組織球腫 Giant cell malignant fibrous histiocytoma(表)
図6:巨細胞を伴う未分化多形肉腫の組織像。多形性を有する卵円形腫瘍細胞の増殖に加えて多数の破骨細胞多核巨細胞の出現と出血を伴う。核分裂像も多く認められる。
図6:巨細胞を伴う未分化多形肉腫の組織像。多形性を有する卵円形腫瘍細胞の増殖に加えて多数の破骨細胞多核巨細胞の出現と出血を伴う。核分裂像も多く認められる。

未分化高悪性多形肉腫の組織像に破骨細胞型多核巨細胞が多数出現したものが、本腫瘍として診断されていた(図6)。しかしながら、近年の診断基準では細胞異型が軽度で多結節性発育を示すものは軟部巨細胞腫 Giant cell tumor of soft tissue (5)、細胞異型高度で類骨産生を伴うものは富巨細胞型骨外性骨肉腫 Giant cell rich extraskeletal osteosarcoma、平滑筋への分化を示すものは破骨型巨細胞を伴う平滑筋肉腫 Leiomyosarcoma with prominent osteoclastic giant cells (6)と診断され、本診断名が用いられることは極めて少ない。従って免疫染色での特異的なマーカーもない。予後は未分化高悪性多形肉腫と同程度であるとされている。


4) 顕著な炎症を伴った未分化多形肉腫 Undifferentiated pleomorphic sarcoma with prominent inflammation/炎症性悪性線維性組織球腫 Inflammatory malignant fibrous histiocytoma(表)
図7:顕著な炎症を伴った未分化多形肉腫の組織像。高度の好中球浸潤を伴いながら奇怪な核を有する腫瘍性巨細胞を認め(中央)、好中球を細胞質内に取り込んだcytophagocytosisの所見も認められる。
図7:顕著な炎症を伴った未分化多形肉腫の組織像。高度の好中球浸潤を伴いながら奇怪な核を有する腫瘍性巨細胞を認め(中央)、好中球を細胞質内に取り込んだcytophagocytosisの所見も認められる。

中高年の後腹膜、腹腔内あるいは深部軟部組織に好発する。重要臓器に近い部位に好発することから、予後は未分化高悪性多形肉腫に比較して不良である。組織学的に未分化高悪性多形肉腫の組織像に加えて、主に好中球よりなる高度の炎症細胞浸潤、異型のない泡沫状組織球の集簇を伴う。大型の多形性腫瘍細胞によるcytophagocytosisの所見もしばしば認められる(図7)。免疫染色では特異的なマーカーはない。後腹膜や腹腔内発生例では後述する脱分化型脂肪肉腫に高発現しているMDM2とCDK4の発現が高頻度に認められ、これらの本態は脂肪成分を認識できない脱分化型脂肪肉腫である可能性が示唆されている (7)。


5) 粘液線維肉腫 Myxofibrosarcoma(表)
図8A:粘液線維肉腫の組織像。A)豊富な粘液基質の中に軽度の多形性を有する短紡錘形腫瘍細胞および細長い曲線状の血管を認める。
図8A:粘液線維肉腫の組織像。A)豊富な粘液基質の中に軽度の多形性を有する短紡錘形腫瘍細胞および細長い曲線状の血管を認める。

図8B:粘液線維肉腫の組織像。B)多空胞性の細胞質を有する偽脂肪芽細胞。
図8B:粘液線維肉腫の組織像。B)多空胞性の細胞質を有する偽脂肪芽細胞。

図8C:粘液線維肉腫の組織像。C)粘液基質に富む部分と(右上)未分化多形肉腫様の充実性部分(左下)。
図8C:粘液線維肉腫の組織像。C)粘液基質に富む部分と(右上)未分化多形肉腫様の充実性部分(左下)。

以前、粘液型悪性線維性組織球腫 Myxoid malignant fibrous histiocytomaと呼ばれていたもので、中高年の四肢の皮下に好発するが、深部軟部組織にも発生する。組織学的に豊富な粘液基質を背景に多形性を有する短紡錘形あるいは星芒状細胞を認め、特徴的な細長い曲線状の血管を伴う(図8A)。腫瘍細胞の中には細胞質内に多数の空胞を有する偽脂肪芽細胞 pseudolipoblastを認める(図8B)。空胞の内容物は脂肪ではなく、アルシアンブルー染色で陽性となる酸性ムコ多糖類である。免疫染色で特異的なマーカーはない。低悪性度のものは全体が粘液基質に富み細胞異型も軽度である。高悪性度のものは粘液基質内の腫瘍細胞の異型が高度で、未分化高悪性多形肉腫と同じ組織像を呈する充実性成分を伴う(図8C)。低悪性度のものは皮下発生例が多く、予後良好であるが (8)、高悪性度のものは深部軟部組織に多く認められ、20〜30%に遠隔転移を来す。低悪性度のものが再発を繰り返すうちに高悪性度の組織像をとることもしばしばある。粘液基質に富むことより、低悪性度線維粘液性肉腫、粘液型脂肪肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫が鑑別診断として挙げられるが、これらの腫瘍は染色体転座関連腫瘍であるので、細胞には多形性は認められない。粘液型脂肪肉腫には真の脂肪芽細胞を認める。


6) 脱分化型脂肪肉腫 Dedifferentiated Liposarcoma(表)
図9:脱分化型脂肪肉腫の組織像。大小不同の脂肪細胞と散在性の異型細胞よりなる高分化脂肪肉腫の部分(左)に接して境界明瞭に高悪性度未分化多形肉腫様の部分(右)を認める。
図9:脱分化型脂肪肉腫の組織像。大小不同の脂肪細胞と散在性の異型細胞よりなる高分化脂肪肉腫の部分(左)に接して境界明瞭に高悪性度未分化多形肉腫様の部分(右)を認める。

中高年の後腹膜に好発するが、四肢の深部軟部組織にも発生する。組織学的に典型例では低悪性度の分化型脂肪肉腫成分と、脱分化成分として高悪性度の未分化多形肉腫成分が明瞭な境界を持って接している像を示す(図9)。両者の境界が不明瞭でなだらかに移行するものや、両成分が複雑に入り混じるものもある。脱分化成分は未分化多形肉腫成分以外に低悪性度の線維肉腫や髄膜腫に類似した組織像を呈する紡錘形細胞よりなるものがある(9)。未分化多形肉腫成分内にさらに横紋筋肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫成分が出現することがある。近年さらに脱分化成分として多形型脂肪肉腫成分を有するものが報告されている(10)。免疫染色では分化型脂肪肉腫成分、脱分化成分ともにMDM2およびCDK4が陽性となるが、これらの抗体は条件設定が困難なことがしばしばあり、FISHによる確認も推奨される。遠隔転移は15〜20%に認められ、後腹膜発生例は四肢発生例に比較して予後不良である。


7) 多形型脂肪肉腫 Pleomorphic liposarcoma(表)
図10:多形型脂肪肉腫の組織像。多数の脂肪空胞によって圧排されて陥凹した核を有する巨大な脂肪芽細胞を認め、脂肪芽細胞および背景の腫瘍細胞の大小不同も顕著である。
図10:多形型脂肪肉腫の組織像。多数の脂肪空胞によって圧排されて陥凹した核を有する巨大な脂肪芽細胞を認め、脂肪芽細胞および背景の腫瘍細胞の大小不同も顕著である。

脂肪肉腫の中では最も頻度の低いまれな組織型で、中高年の四肢深部軟部組織に好発する。予後不良であり30%に転移を認め、5年生存率は60%程度である (11)。組織学的に未分化多形肉腫と同様な多形性を有する紡錘形細胞や腫瘍性巨細胞とともに、特徴的な多空胞性の大型脂肪芽細胞を認める(図10)。脂肪芽細胞の核は脂肪滴によって圧排されて陥凹し、濃染性である。核分裂像も多く認められ腫瘍壊死を伴うことも多い。S-100蛋白は脂肪のマーカーであるが、本腫瘍においては脂肪への分化を示す部分でも33%にしか陽性とならない (11)。


8) 多形型平滑筋肉腫 Pleomorphic leiomyosarcoma(表)
図11A:多形型平滑筋肉腫の組織像。A)腫瘍の大部分は短紡錘形細胞および腫瘍性巨細胞よりなる未分化多形肉腫様の組織像を呈する。
図11A:多形型平滑筋肉腫の組織像。A)腫瘍の大部分は短紡錘形細胞および腫瘍性巨細胞よりなる未分化多形肉腫様の組織像を呈する。

図11B:多形型平滑筋肉腫の組織像。B)一部で両切りたばこ状の核を有する紡錘形細胞が束状に配列する、典型的な平滑筋肉腫の像を呈する。
図11B:多形型平滑筋肉腫の組織像。B)一部で両切りたばこ状の核を有する紡錘形細胞が束状に配列する、典型的な平滑筋肉腫の像を呈する。

組織学的に腫瘍の大部分が未分化多形肉腫と同様な多形性を示す成分よりなり(図11A)、一部に紡錘形腫瘍細胞の束状配列よりなる典型的な平滑筋肉腫の成分を伴う(図11B)(12)。この組織型の大部分は過去には多形型悪性線維性組織球腫と診断されていたものと思われる。未分化多形肉腫様成分は免疫染色で平滑筋への分化が証明されるものと、そうでないものがある。免疫染色によるマーカーとしては単独で平滑筋のマーカーとなりうるものはなく、desmin、 smooth muscle actin、 h-caldesmonのうち少なくとも2種類以上が陽性となることが必要である (13)。多形型平滑筋肉腫は通常の平滑筋肉腫に比較して特に後腹膜発生例で予後不良である。


9) 多形型横紋筋肉腫 Pleomorphic rhabdomyosarcoma(表)
図12A:多形型横紋筋肉腫の組織像。A)多形性を有する多角形あるいは卵円形腫瘍細胞のシート状増殖の中に豊富な好酸性の細胞質を有する腫瘍性巨細胞を認め、HE所見からは未分化多形肉腫との鑑別は困難であり、横紋筋への分化も見出しにくい。
図12A:多形型横紋筋肉腫の組織像。

図12B:多形型横紋筋肉腫の組織像。B)Myogeninの免疫染色で腫瘍性巨細胞と周囲の多形性細胞の核が陽性となり、これらの細胞が横紋筋への分化を示すことが証明される。
図12B:多形型横紋筋肉腫の組織像。B)Myogeninの免疫染色で腫瘍性巨細胞と周囲の多形性細胞の核が陽性となり、これらの細胞が横紋筋への分化を示すことが証明される。

胎児型や胞巣型が小児に好発するのに対し、中高年に好発する。下肢の深部軟部組織に多く認められ、予後は極めて不良である (14)。組織学的に腫瘍は主に紡錘形や多角形の腫瘍細胞よりなり、その中に多形性を示し好酸性細胞質を有する細胞や腫瘍性巨細胞を認める(図12A)。HE染色のみでは未分化多形肉腫との鑑別が困難なことも多く、desmin, muscle specific actin, myogeninの免疫染色による多形性腫瘍細胞の横紋筋への分化の確認が必須である(図12B)。


10) 骨外性骨肉腫 Extraskeletal osteosarcoma(表)
図13A:骨外性骨肉腫の組織像。A)多形性腫瘍細胞よりなり類骨産生の認められない部分。
図13A:骨外性骨肉腫の組織像。A)多形性腫瘍細胞よりなり類骨産生の認められない部分。

図13B:骨外性骨肉腫の組織像。B)豊富な類骨産生を認める部分。
図13B:骨外性骨肉腫の組織像。B)豊富な類骨産生を認める部分。

骨原発骨肉腫の主な組織型すべてが骨外性骨肉腫にも認めることができる。腫瘍細胞が多形性に富み類骨産生が少ない場合は未分化多形肉腫との鑑別が問題となるが(図13A)、部分的に腫瘍性類骨産生が確認される(図13B)。既述のようにかつて巨細胞性悪性線維性組織球腫と診断されていたものの中には、富巨細胞型骨外性骨肉腫が多く含まれている。


11) 悪性末梢神経鞘腫瘍 Malignant peripheral nerve sheath tumor(表)
図14A:多形性の顕著な悪性末梢神経鞘腫瘍の組織像。A)紡錘形腫瘍細胞が密に束状に配列し交錯する通常の悪性末梢神経鞘腫瘍の組織像。
図14A:多形性の顕著な悪性末梢神経鞘腫瘍の組織像。A)紡錘形腫瘍細胞が密に束状に配列し交錯する通常の悪性末梢神経鞘腫瘍の組織像。

図14B:多形性の顕著な悪性末梢神経鞘腫瘍の組織像。B)一部で単核あるいは多核の腫瘍性巨細胞を種々の程度に認める。
図14B:多形性の顕著な悪性末梢神経鞘腫瘍の組織像。B)一部で単核あるいは多核の腫瘍性巨細胞を種々の程度に認める。

典型的な悪性末梢神経鞘腫瘍では紡錘形腫瘍細胞の束状配列と特徴的な粗密配列を示すが、多形性が顕著で未分化多形肉腫と鑑別困難な成分を有するものが存在する(図14A、B)。免疫染色ではS-100蛋白が紡錘形細胞成分に部分的に陽性となるが、全く陽性像を示さないものもある。多形性成分を有するものはNF1に伴う症例に多く報告されている。しかしながらNF1のない例や、腫瘍と神経の連続のないものでは多形性成分のみを見ると確定診断が非常に困難である。


4. その他

図15A:肉腫様変化を伴った腎細胞癌の組織像。A)多形性を有する紡錘形肉腫様細胞よりなる部分。
図15A:肉腫様変化を伴った腎細胞癌の組織像。A)多形性を有する紡錘形肉腫様細胞よりなる部分。

図15B:肉腫様変化を伴った腎細胞癌の組織像。B)腫瘍内に認められる明らかな乳頭状腎細胞癌の成分。
図15B:肉腫様変化を伴った腎細胞癌の組織像。B)腫瘍内に認められる明らかな乳頭状腎細胞癌の成分。

軟部腫瘍以外の、肉腫様癌および多形性癌などの癌腫、未分化大細胞型リンパ腫および悪性黒色腫は多形性を有する代表的な悪性腫瘍であり、多形性軟部肉腫と組織学的に類似しているだけでなく治療方針が全く異なるので、これらの腫瘍の可能性も念頭において鑑別診断を行わなければならない。肺癌や腎細胞癌は肉腫様変化を来しやすく、転移巣で未分化多形肉腫の像を呈することがある。頭頸部腫瘍では肉腫様変化を伴った扁平上皮癌や甲状腺未分化癌が鑑別疾患として挙げられる。後腹膜腫瘍の生検で多形性腫瘍を認めた場合、軟部多形悪性腫瘍と鑑別が重要な腫瘍として、肉腫様変化を伴った腎細胞癌が挙げられる(図15A、B)。肉腫様癌、多形性癌の鑑別には形態学的に上皮様成分の有無を検索し、免疫染色でサイトケラチンやEMAの発現の有無を確認する。未分化大細胞型リンパ腫はしばしば若年者の節外性に発生する。組織学的には腎臓形あるいは馬蹄形核を有する多形性腫瘍細胞がシート状に増殖し、免疫染色でCD30とともに、若年者例ではAnaplastic lymphoma kinase (ALK) が陽性となる。悪性黒色腫も顕著な多形性を示すことがあり、鼻腔をはじめとする頭頸部腫瘍では重要な鑑別診断となる。組織学的に特徴的な明瞭な核小体や、メラニン色素の存在を認め、免疫染色ではS-100蛋白、HMB45、Melan Aといった悪性黒色腫のマーカーが陽性となる。


5. 参考文献

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小田義直(九州大学大学院医学研究院形態機能病理)


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