Hodgkinリンパ腫未分化大細胞型リンパ腫の病理診断の実際

ホジキンリンパ腫Hodgkin lymphomaと未分化大細胞型リンパ腫 anaplastic large cell lymphomaの病理診断の実際 -特に留意点

更新日:2003年10月17日
掲載日:2003年10月17日

愛知県がんセンター遺伝子病理診断部 中村 栄男

I. ホジキンリンパ腫―はじめに

ホジキンリンパ腫はThomas Hodgkinによる最初の報告以来、既に170年を経る。
その臨床病理学的特徴については、すでに多くの成書に詳述されているが、その明確な診断基準は"反応性背景の中のReed-Sternberg(RS)細胞"の認識ということに尽きる。
しかしながらRS細胞が見出されるという組織学的共通項を除けば、病態と組織像にかなりの幅を有する腫瘍(群)でもある。
その本態については近年の分子生物学的解析手法の進歩によりB細胞由来とする意見が大勢を占めつつある。一方、樹状細胞/単球由来にRS細胞の起源を求めるものもあり、なお議論がある。
現在でもホジキンリンパ腫という人名を冠した疾患名が用いられているゆえんである。


II. ホジキンリンパ腫分類WHO histological classification of Hodgkin lymphoma

  • Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma (NLPHL)
  • Classical Hodgkin lymphoma (CHL)
    • Nodular sclerosis classical Hodgkin lymphoma (NSHL)
    • Mixed cellularity classical Hodgkin lymphoma (MCHL)
    • Lymphocyte-rich classical Hodgkin lymphoma (LRCHL)
    • Lymphocyte-depleted classical Hodgkin lymphoma (LDHL)

III. ホジキンリンパ腫の歴史

1832年に英国のThomas Hodgkinがリンパ節と脾を主病変とする致死的な疾患について記載した。
その際に扱われた7症例の臓器が現在もロンドンの病院に保存されている。
その多くが現在の基準でも確実なホジキンリンパ腫であり、歴史的にWHO分類以前ではホジキン病 Hodgkin's diseaseと呼称された。この疾患の本態の解明は、他のリンパ腫の本態的理解に遅れ、比較的最近のことと云える。
ホジキン病の分類は、リンパ腫分類の黎明期である1944年に出されたJackson-Parkerの分類に始まる。傍肉芽腫paragranuloma、肉芽腫 granuloma、及び肉腫 sarcomaに三分したものである。予後指標となりえたものの、大多数の症例が肉芽腫に含められた点に問題が指摘された。
1966年、Lukes-Butlerの6項目より成るホジキン病分類が提案された。さらに同年、米国New York州Ryeでの専門家会議によりLukes-Butler 分類を簡略化した4型の形で新分類が提案された。これがRye分類であり、理解し易く臨床的にも有用であるとして1990年代まで広く使用されて来た。
Lukes-Butlerの提案の最も重要な貢献の一つは、結節硬化型 nodular sclerosis (NS)亜型の設定である。これはそのままRye分類にも引継がれた。種々の点で特異な型で、形態学的には結合組織の帯状増生による実質の結節化と、いわゆる凹窩細胞 lacunar cellの存在により特徴づけられる。
これに対して他のlymphocye predominance (LP)、mixed cellularity (MC)、lymphocyte depletion (LD)の3型は同一疾患の示す連続スペクトルの組織学的な三分割と理解された。
一方、Lukes-Butler分類にあったlymphocytic and/or histiocytic (L&H)、nodularという亜型はRye分類ではそのびまん型(diffuse)と一緒にlymphocytic predominance (LP)の中に含められた。
もともとL&H nodularには典型的なホジキン病に出現するReed-Sternberg (RS)細胞は殆ど見られず、いわゆるL&H cell或いは俗にpopcorn cellと呼ばれる細胞をRS細胞のvariantと見なして診断的所見とした。
しかし、近年、L&H cellが単クローン性のB細胞であることが示されるなど種々の点でL&H nodular型が他の亜型と異なることが判明し、その特異性が確立された。Rye分類における妥協はこの病変の特異性の認識を妨げたとの批判があり、以後の時代に理論上の禍根を残したとも云える。

そこで、REAL分類及びWHO分類では、L&H nodularの性格の病変をdiffuse areaの有無に拘らずnodular lymphocyte predomoinant Hodgkin lymphomaとして別個に位置づけ、修正が図られることとなった。
一方、単にリンパ球に富む通常型はlymphocyte rich classical Hodgkin lymphomaとして明確に分けられることとなった。
またWHO分類では、明らかな腫瘍としてホジキン"リンパ腫" Hodgkin lymphomaの名称が用いられている。

いづれにせよ、ホジキン病は互に性格の異なる、
1)混合型 mixed cellularity (MC)を中心にびまん性LPとLDを含む古典型(classical Hodgkin lymphoma)の系列、 2)結節硬化型 nodular sclerosis (NS)、及び 3)上記nodular lymphocyte predominant (LP) の3病変より成立つとの観点より病理診断、病態把握、治療設定及び統計的解析等に対処することが妥当と思われる。

Jackson-Parker   Lukes-Butler   Rye   WHO
Paragranuloma L&H nodular type Lymphocyte predominance NLPHL*
L&H nodular type   LRCHL
Granuloma Nodular sclerosis type   Nodular Sclerosis   NSHL
Mixed type   Mixed cellularity   MCHL
Sarcoma Diffuse fibrosis type   Lymphocyte depletion   LDHL
Reticular type
*Refer to WHO classification

IV. ホジキンリンパ腫の定義

  1. Classical Hodgkin lymphoma (CHL)
    適当な反応性背景の中にReed-Sternberg細胞と目される大型細胞を認める腫瘍である。
  2. Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma (NLPHL)
    結節状増殖を示す反応性細胞の中にポップコーン細胞あるいはL&H細胞として知られる散在性大型細胞により特徴づけられるB細胞腫瘍である。
  3. CHLとNLPHLは、臨床病態、組織所見、特に背景の反応性要素、表現型、免疫グロブリン遺伝子転写状態の全てにおいて異なる疾患である。

V. ホジキンリンパ腫病態理解の要点

  1. 男性優位 (M:F=1.5:1)
  2. リンパ節(約90%)、特に頚部(左側)に発生する。(頚部75%、腋窩15%、ソケイ10%)
  3. 縦隔を除き節外病変は稀である。
  4. 発症は全年齢層に亘るが、特に若年成人に多い。
  5. ときに大型腫瘤を形成する(10cm以上のリンパ節腫瘤、胸隔径1/3以上の縦隔病変)。
  6. B症状は約25%に認められる。
  7. 予測し得る形 nonrandom and highly predictableでのリンパ行性進展を示す。
  8. ときに細胞性免疫能の低下、末梢血リンパ球の減少を示す。
  9. しばしば多クローン性高免疫グロブリン血症症を示す。
  10. ときにparaneoplastic syndromeを示す。

補足:B症状

  • 発熱 Fever higher than 38℃ for 3 consecutive days
  • 夜間盗汗 Drenching night sweats
  • 体重減少 Unexplained loss of more than 10% of body weight within the preceding 6 months

VI. ホジキンリンパ腫予後予測因子 Risk factors for international prognostic score

  1. Age > 45 years
  2. Male sex
  3. Hemoglobulin < 10.5g/dl
  4. Albumin < 4g/dl
  5. Lymphocytes < 600/ml or < 8%
  6. White blood count > 15,000/ml
    (Hasenclever D, Diehl V. New Eng J Med 1998;339:1506)

VII. ホジキンリンパ腫疫学の要点

  1. 頻度は、欧米では全悪性リンパ腫の20−30%、アジアでは<10%
  2. 発展途上国では小児例(0−14歳)にピークが見られる。
  3. 先進国では若年成人例(14−40歳)にピークが見られる。
  4. 老年成人例(55−74歳)のピークは、発展途上国、先進国に共通する。
  5. 従って、発症年齢分布は通常二峰性を示す。
  6. 発展途上国ではMCHL, LDHLが多い。
  7. 先進国、特に都会ではNSHLが多い。
  8. 先進国農村地帯では上記二者の中間型を示す。
  9. Epstein-Barr virus (EBV)は、先進国では30−50%に認められる。
  10. EBVは発展途上国では、ほぼ100%に認められる。
  11. 伝染性単核球症の既往があれば、発症の危険率は2−4倍に高まる。
  12. EBVはMCHL、特に15歳未満あるいは40−50歳以上の患者に検出される。
  13. EBVの病因的意義は明らかではない。

VIII-1. 古典的ホジキンリンパ腫classical Hodgkin lymphomaの臨床病理の要点

  1. ホジキンリンパ腫の約95%を占める。
  2. 55%の症例が臨床病気 stage I and II
  3. 脾腫は約20%、骨髄浸潤は5%。
  4. 骨髄にリンパ管はなく、骨髄浸潤はstage IV。
  5. 反応性背景の中にReed-Sternberg細胞を認める。ただし"診断的"なものは少ない点に留意。
  6. 免疫染色による確認は必須(CD30 90-100%, CD15 75-80%, CD20 10-20[40]%, CD45RO/43 <10%,EMA <5%)。
  7. 98%以上の症例で胚中心B細胞由来、稀に末梢T細胞由来とされる(WHO)。しかし、B細胞としての分化段階を巡る議論、あるいは濾胞樹状細胞由来とする説もある。

VIII-2. 古典的ホジキンリンパ腫、結節硬化型nodular sclerosis classical Hodgkin lymphomaの臨床病理の要点

  1. 定義−少なくとも一つの結節を囲む結合組織の帯状増生と凹窩細胞 lacunar cellの存在により特徴づけられる。
  2. ホジキンリンパ腫の40−70%を占める。
  3. 年齢中間値、28歳。M:F=1:1
  4. 縦隔病変60−80%、bulky disease 54%、脾臓・肺浸潤10%、骨髄浸潤3%
  5. 多くが臨床病期stage II、B症状は約40%
  6. 病理診断は、結節性増殖(図1a), 被膜肥厚, 結合組織の帯状増生, 凹窩細胞(図1b, 図1c, 図1d)に着目。
  7. しばしば好酸球浸潤が目立つ。著しい場合は予後不良とされる。
  8. ときに壊死、微小膿瘍を伴い、その周囲に腫瘍細胞の集蔟が目立つ。
  9. EBV陽性率は<20%

VIII-3. 古典的ホジキンリンパ腫、混合細胞型mixed cellularity classical Hodgkin lymphomaの臨床病理の要点

  1. 定義−結節性硬化像のないびまん性あるいは結節様の反応性背景の中にHRS細胞を認める。
  2. ホジキンリンパ腫の20−50%を占める。
  3. 年齢中間値、37歳。M:F=2〜3:1
  4. 縦隔病変は稀であり、脾臓浸潤30%、骨髄浸潤10%、肝臓浸潤3%、他臓器浸潤1−3%
  5. しばしば臨床病期 stage III,IV、またB症状を伴う。
  6. 通常、定型的なH-RS細胞が観察される(図2a, 図2b, 図2c, 図2d)。
  7. 実質内に一部線維化を伴うことがあるが、被膜の肥厚は観察されない。
  8. しばしば好酸球、好中球、組織球、形質細胞浸潤を伴う。とき類上皮細胞反応を示す。
  9. 壊死や腫瘍細胞の集蔟は目立たない。
  10. 亜型の存在、interfollicular Hodgkin lymphomaに留意。
  11. EBV陽性率は70−80%(図2e)。

VIII-4. 古典的ホジキンリンパ腫、リンパ球優位型 lymphocyte rich classical Hodgkin lymphomaの臨床病理の要点

  1. 定義−小型リンパ球からなる結節性あるいはびまん性増殖を示す反応性背景の中に散在性に少数のH-RS細胞が観察される。背景に好酸球、好中球、線維化は観察されない。反応性胚中心を残す。
  2. 基本的にclassical Hodgkin lymphomaの初期病変である。経過中にMC,NS,LDへ移行。
  3. ホジキンリンパ腫の5%を占める
  4. 年齢中間値、43歳。M:F=2〜3:1
  5. 縦隔病変15%、bulky mass11%、B症状は稀
  6. 臨床病期 stage I/IIが70−80%を占める。
  7. 再発率はNLPHLと同じであるが、多発性再発 multiple relapsesの頻度は少ない(5% vs 27%)
  8. ただし、再発後の治療反応性はNLPHLより悪い。
  9. 従って5年生存率はNLPHLより悪い(80% vs 98%)
  10. EBV陽性率は30−50%

VIII-5. リンパ球減少型ホジキンリンパ腫 lymphocyte depletion Hodgkin lymphomaの臨床病理の要点

  1. 定義−H-RS細胞のびまん性増殖を示す。ときに背景の非腫瘍性反応性要素の減少を伴う。診断基準が過去に変遷を繰り返し、明確ではない。ゆえに信頼し得る臨床データに乏しい。
  2. ホジキンリンパ腫の2%を占める。

VIII-6. 古典的ホジキンリンパ腫との連続性が問題となる非ホジキンリンパ腫(Classical Hodgkin lymphomaとoverlapするnon-Hodgkin lymphoma)

  1. Diffuse large B-cell lymphoma, anaplastic large cell variant
  2. ALK-negative anaplastic large cell lymphoma

VIII-7. 古典的ホジキンリンパ腫 classical Hodgkin lymphomaの鑑別診断

  1. Anaplastic large cell lymphoma
  2. Large B-cell lymphoma
  3. Peripheral T-cell lymphoma (adult T-cell leukemia/lymphoma, lymphoepithelioid lymphoma, angioimmunoblastic T-cell lymphoma)
  4. Immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorder (LPDs) including senile EBV-assocaited LPDs
  5. B-CLL with Reed-Sternberg-like cells
  6. Follicular dendritic cell tumor
  7. Interdigitating cell sarcoma
  8. Castleman disease, plasma cell type
  9. Maligant melanoma
  10. Infectious mononucleosis and chronic active EBV infection
  11. Sarcoidosis
  12. Reactive fibrohistiocytic proliferation
  13. Xanthogranulomatous inflammation
  14. Suppurative or necrotizing granulomatous lymphadenitis

IX-1. 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphomaの臨床病理の要点

  1. 長く腫瘍か反応性病変か定かではなかった。"ホジキン"の名を得て、初めて腫瘍に仲間入り。
  2. ホジキンリンパ腫の3−8%を占める。
  3. 年齢中間値、35歳(29−39歳)。LRCHLより若い。M:F=2〜3:1。
  4. 縦隔病変15%、bulky mass11%、B症状は稀
  5. 臨床病期 stage Iが50%以上を占める。
  6. 肝臓浸潤<3%、骨髄浸潤<1%、肺浸潤<1%、bulky disease 13%。
  7. 予後10-year overall survivalは80−90%。
  8. 予後不良因子は進行病期 advanced stageと高齢 older age。
  9. 10年以上経過後の晩期再発 late relaspeが多い
  10. 経過中にnon-Hodgkin lymphoma、特にdiffuse large B-cell lymphomaに移行することがある。頻度は約3%(報告により差、0.9%,2.6%,2.9%など)。
  11. Overtreatmentを避けることが重要。
  12. ただし、classical Hodgkin lymphomaより長期の経過観察が必要。
  13. 定型的なH-RS細胞は認められない。結節状増殖を示す反応性細胞の中のポップコーン細胞に着目(図3a, 図3b)
  14. 免疫染色による確認は必須(CD20陽性[図3c]は必須 100%、CD30はときに陽性、CD15、BCL2は陰性)
  15. 胚中心B細胞由来のB細胞腫瘍である。
  16. EBVは検出されない。

IX-2. 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫との連続性が問題となる非ホジキンリンパ腫(Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphomaの延長上にあると目されるnon-Hodgkin lymphoma)

  1. Diffuse large B-cell lymphoma, T-cell/histiocyte rich variant

IX-3. 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphomaの鑑別診断

  1. Classical Hodgkin lymphoma
  2. Follicular lymphoma, especially floral variant
  3. Progressive transformation of germinal centers

X-1. 未分化大細胞型リンパ腫とホジキンリンパ腫の対比・鑑別点

Anplastic large cell lymphoma (ALK+) Hodgkin lymphoma
若年者に多い
(平均23歳、中間値17歳)
成人に多い
(結節硬化型 平均41歳、中間値 40歳、混合細胞型 平均および中間値47歳)
しばしば節外性に発症 縦隔以外の節外発生は稀
高免疫グロブリン血症は稀 しばしば高免疫グロブリン血症を伴う
類洞浸潤像が目立つ 類洞浸潤像はないか目立たない
腫瘍細胞の結合性あるいは粘着性増殖 腫瘍細胞は散在性
好酸球浸潤や類上皮細胞反応がない 好酸球浸潤や類上皮細胞反応を認める
被膜肥厚、結節硬化像はない 被膜肥厚、結節硬化像が認められる
馬蹄様、腎臓様あるいはド−ナッツ様の不整形大型核 典型的なReed-Sternberg細胞やHodgkin細胞、 lacunar細胞
核小体は複数で不整形、目立たない 核小体は単一大型で明瞭
ALK陽性 ALK陰性
CD15/LeuM1陰性 ときにCD15/LeuM1陽性
EMA陽性 EMA陰性
Epstein-Barr virus陰性 ときにEpstein-Barr virus陽性

X-2. ホジキンリンパ腫―参考文献

  1. Jaffe ES, Harris NL, Stein H, Vardiman JW. World Health Organization Classification of Tumors. Pathology and Genetics of Tumours of Hematopietic and Lymphoid Tissues. IARC Press, Lyon, 2001.
  2. Warnke RA, Weiss LM, Chan JKC, Clearly ML, Dorfman RF. Tumors of the Lymph Nodes and Spleen. Atlas of Tumor Pathology. AFIP, Washington, D.C., 1994

XI. 未分化大細胞型リンパ腫―はじめに

未分化大細胞型リンパ腫anaplastic large cell lymphoma (ALCL)は、1990年代以降に成立した updated Kiel分類、さらに新たに提唱されたREAL分類やWHO分類では独立項目として組み入れられている。
WHO分類では、ALCLとの診断はT細胞性あるいはnull細胞性のものに限られている。

従来のB細胞性ALCLは、臨床病理学的にびまん性B大細胞リンパ腫diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)と大差はないものとして同項目下の形態学的亜型、anaplastic varinatとして取り扱われている。
T/null細胞性のものとは全く別個の腫瘍である点に留意が必要である。


XII. 未分化大細胞型リンパ腫の歴史

ALCLを考える上で重要なことは、その疾患概念自体が常に歴史的な変遷過程にあり、必ずしも単一の疾病ではなく生物学的特性において種々の腫瘍を包含していたとの認識である。
Ki-1抗原はSchwabら(1982年)によりホジキン病細胞株L-428に対して作製されたモノクロ−ナル抗体Ki-1(CD30)により認識される抗原で、ホジキン病におけるReed-Sternberg細胞とその近縁細胞に特異的なものと考えられた。当初、Ki-1リンパ腫はSteinら(1985年)によりKi-1/CD30陽性で、組織像、増殖および抗原発現様式に類似性を示す一群の非ホジキンリンパ腫として報告された。
過去において病理組織学的に悪性組織球症あるいは未分化癌、悪性黒色腫の転移と誤診された症例が多く、その特徴的な組織所見と小児発生例に着目しKadinら(1986年)により、未分化大細胞型リンパ腫 anaplastic large cell lymphoma (ALCL)の概念が確立した。
近年、ALCL発生にt(2;5)染色体転座によるanaplastic lymphoma kinase (ALK)の異常発現が深く関与することが明らかにされ、さらにALK陽性例が極めて均質な臨床病理学的特徴を示すことが指摘された。

現在、ALCLの診断にALK発現の有無の検討は必須である。
最近、ALCLについては優れた総説が相次いで公刊された。
ALK陽性ALCLの認識とその意義については普遍的な認識の域に達したと云える。
一方、ALK陰性ALCLの本態は必ずしも定かではなく、多くの議論があり今後の課題と云えよう。


XIII. 未分化大細胞型リンパ腫とanaplastic lymphoma kinase (ALK)

当初、Kanekoらにより小児ALCLに特異なt(2;5)(p23;q35)染色体転座が指摘された。
この転座はALCL症例の40ー60%に証明される。
また、Shiotaらはt(2;5)転座をもつALCL細胞株(AMS3)より抗リン酸化チロシン抗体を用いて免疫沈降することにより80 kDaのリン酸化蛋白質p80を同定した。
また、これがLtk類似の新たなチロシンキナ−ゼであることを示し、anaplastic lymphoma kinaseと名付けた。

さらに、ShiotaらとMorrisらが別個の方法で、ALCL発生に深く関わる癌遺伝子の存在が推定されたt(2;5)転座切断点を分子生物学的に解明した。
その結果、p80が2番染色体上に位置するanaplastic lymphoma kinase (ALK)と、5番染色体上のnucleophosmin (NPM)からなる染色体転座によって特異的に発現したキメラ蛋白質 chimeric/fusion protein p80NPM/ALKであることが明らかとなった。
一方、ALCLではt(2;5)以外にも、ときにt(1;2)(q25;p23)、inv(2)(p23;q35)などによるALK発現も観察される。
また、正常の血液リンパ系組織でALK発現は認められない。
ALKはパラフィン切片での免疫染色により容易に検出が可能であり、ALCLの診断に際しては必須である。
表1


XIV. 未分化大細胞型リンパ腫の臨床病理学的特徴

ALK陽性例と陰性例とでは臨床病態と予後に大きな差があり、主なものを表2に示す。


XV. ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫 ALK-positive anaplastic large cell lymphoma

1.臨床像

30歳以下の若年者に多く、男女差はない。頚部リンパ節に次いで鼡経部リンパ節が生検されることが多く、また骨やまれに皮膚などの節外臓器からも発生する。ALK陽性ALCLは若年者に多く、発症年齢は中間値21歳である。初発臓器はリンパ節と節外臓器が2:1の割合である。臨床経過は遷延性で化学療法に対する反応性も良く完治する症例が多い。ときに治療に難渋する症例も認められる。


2.病理学的特徴

腫瘍細胞はリンパ節では実質内にびまん性に分布し、特徴的な類洞浸潤像が高率に認められる。また、腫瘍細胞が結合性あるいは粘着性に増殖することが多く、未分化癌や悪性黒色腫の転移との鑑別が問題となる。腫瘍細胞形態は多様性に富み、大型で円形あるいは楕円形核に加え、腎臓様あるいはド−ナッツ様などと表現される特異な核形を示す。ときに巨核あるいは花冠状の多核細胞も認められる。また、ALK陽性ALCLでは、これら核形に加え複数の不規則であまり目立たない核小体を有する例が多い。また、反応性要素として好中球や形質細胞浸潤を伴うことがあるが、好酸球浸潤や類上皮細胞反応は稀である。参考までにALK陽性ALCLに認められる主な形態学的なvariantsを表3に示す(図4a, 図4b, 図4c, 図4d, 図4e, 図4f, 図4g


腫瘍細胞は免疫組織化学的にCD30/Ki-1陽性(図5a)で、本来は上皮性腫瘍のマ−カ−である epithelial membrane antigen (EMA)(図5b)や糖鎖抗原であるBNH9が高率に陽性となり、診断の補助となる。

さらにリンパ球活性化に伴い発現されるCD25やCD71が高率に検出される。ALKの発現は通常核と細胞質(図5c)、ときに細胞質のみに観察される。細胞内分布の差異は、染色体転座パターンの相違に由来する。ALK陽性ALCLの大多数がCD30+、CD15-、EMA+、BCL2-と極めて均質な一群を形成している。腫瘍細胞にEpstein-Barr virusは検出されない。T細胞性あるいはnull細胞性であり、B細胞性のものは認められない。さらに、約70%の症例でgranzyme B(図5d)、TIA-1あるいはperforinなどの細胞傷害性分子の発現が観察され、細胞傷害性T細胞 cytotoxic T cell由来を指摘されている。また、T細胞抗原受容体遺伝子の再構成がしばしば証明される。


補足:ALCL診断の留意点

ALK陽性ALCLは極めて均一な疾患単位を形成
若年者に発症、平均25歳、中間値21歳
治療反応性は良く、一般に予後は良い
ALKが診断の決め手
EMA、granzyme B、TIA1が高率に陽性
CD56陽性例は予後不良
CD15、Epstein-Barr virusは検出されない
ALK"陰性"ALCLの本態は多様で、診断に注意が必要


XVI. ALK陰性未分化大細胞型リンパ腫ALK-negative anaplastic large cell lymphomaの多様性

以前よりALK陰性ALCLと報告されたものは、CD30陽性の様々なリンパ系腫瘍からなる。
ホジキンリンパ腫、高悪性度末梢性T細胞リンパ腫と見なされるものなど、その本態は多様である(表4
さらに皮膚においてはlymphomatoid papulosisとの関連が示唆される。WHO分類では、この点に着目して皮膚発生例(ALK陰性)をprimary cutaneous anaplastic large cell lymphomaとして別個に列記している。

また、菌状息肉症などから二次的に高悪性度転化を来したと考えられる症例も認められる。これら本態的に多様な腫瘍の相互の鑑別は必ずしも容易ではなく、充分に整理されたものではない。従って、ALK陰性ALCLという診断名の取り扱いは個々の診断者の考え方に委ねられている。
一般的にALK陰性ALCLと診断される症例は高齢者に多く、発症年齢は中間値57歳である。進行病期(IIIーIV期)症例が約68%を占め、治療的に難治例が多い。

ALK陰性ALCL例は陽性例と比較して一般に腫瘍細胞形態の多形性に富むとされる(図6a, 図6b および図7a, 図7b, 図7c)。 また、CD15陽性例やEBV陽性例も認められる。



XVII. 未分化大細胞型リンパ腫―おわりに

従来、Ki-1リンパ腫あるいは未分化大細胞型リンパ腫と診断された症例の中でALK陽性ALCLが極めて均質な一群を形成していることが明らかにされた。ALK+ ALCLが、今後の如何なる分類においても普遍的な位置を占めることは確実である。
一方、ALK陰性ALCLは本態的に多様な腫瘍からなり、その取り扱いは今後の検討課題である。


XVIII. 未分化大細胞型リンパ腫―参考文献

  1. Stein H, et al: The expression of the Hodgkin's disease associated antigen Ki-1 in reactive and neoplastic lymphoid tissue: evidence that Reed-Sternberg cells and histiocytic malignancies are derived from activated lymphoid cells. Blood 66:848-858, 1985
  2. Kadin ME: Primary Ki-1-positive anaplastic large cell lymphoma: a distinct clinicopathologic entity. Ann Oncol 1994;5:25-30
  3. Shiota M, et al: Hyperphosphorylation of a novel 80 kDa protein-tyrosine kinase similar to LTK in a human Ki-1 lymphoma cell line, AMS3. Oncogene 9:1567-1574, 1994
  4. Morris SW, et al: Fusion of a kinase gene, ALK, to a nucleolar protein gene, NPM, in non-Hodgkin's lymphoma. Science 263:1281-1284, 1994
  5. Shiota M, et al: Anaplastic large cell lymphomas expressing the novel chimeric p80NPM/ALK: a distinct clinicopathologic entity. Blood, 86:1954-1960, 1995.
  6. Nakamura S, et al: Anaplastic large cell lymphoma: a distinct molecular pathologic entity: a reappraisal with special reference to p80NPM/ALK expression. Am J Surg Pathol 21:1420-1432, 1997.
  7. Benharroch D, et al: ALK-positive lymphoma: a single disease with a broad spectrum of morphology. Blood 91:2076-2084, 1998
  8. Kagami Y, et al: Nodal cytotoxic lymphoma. A clinicopathologic study of 66 patients. Am J Surg Pathol 23:1184-1200, 1999.
  9. Stein H, et al: CD30-positive anaplastic large cell lymphoma: a review of its histopathologic, genetic, and clinical features. Blood 96:3681-3695, 2000
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