肝細胞腺腫

更新日:2013年10月24日
掲載日:2013年10月24日
1.疫学・予後  2.肉眼的所見  3.組織学定義  4.画像所見  5.組織学的問題点

1. 疫学・予後

まれな腫瘍で、欧米では10万人に3から4人に発生し、アジアではさらに少ないと言われる。欧米では85%が若い女性に発生し、子どもや高齢者あるいは男性では少ない。しかし、本邦例では平均年齢が35歳と若いが、男女差は認められない。亜型によって好発年齢に差があり、炎症型亜型は中高年者(平均年齢約50歳)にみられる。
腹腔内出血が20〜25%にみられ、5cm以上になるとそのリスクが増すといわれる。悪性化が約7%にみられるといわれるが、亜型によってそのリスクは異なる。また、糖原病やandrogenic-anabolic steroid使用者でそのリスクが高い。5cm以上の腫瘍は治療の対象となる。


2. 肉眼的所見

大きさは顕微鏡レベルから20cm大までみられるが(写真5写真6)、多くは大きな球状の軟らかい腫瘍で、割面は均一な場合と出血や壊死、線維化や脂肪化に伴う色調変化を伴う場合がある。境界は不明瞭で、線維性被膜を有しないことが多い。しかし、線維性被膜を伴う例があり、脂肪化の強い亜型や類洞様構造の拡張や出血を伴う亜型もみられる。
背景肝は正常肝である。


3. 組織学定義

異型の乏しい肝細胞様腫瘍細胞が正索状配列で増殖し、時に偽腺管構造を形成し、多数のunpaired arteryを伴う。核異型も乏しい。腫瘍内に門脈域は通常みられない。
亜型ごとに異なる特徴を示す。

Hepatocyte nuclear factor(HNF)1α遺伝子不活化型(写真5)
脂肪化が強く(VS4)、免疫染色で、腫瘍細胞内のliver type fatty acid binding protein(L-FABP)蛋白の発現消失が示される(VS5)
βカテニン遺伝子活性化型(写真6)
腫瘍細胞の異型性が増し(VS6)、悪性転化の頻度が高い。免疫染色で、腫瘍細胞にβカテニン蛋白の核内集積がみられ(VS7)、glutamine synthetaseのびまん性陽性像(VS8)が認められる。
Inflammatory(炎症)型
炎症細胞浸潤を伴い、類洞様血管の拡張や出血が見られ、腫瘍内に門脈域様構造と細胆管様構造の増生を伴う(VS9)。免疫染色で、腫瘍細胞はserum amyloid A (VS10)およびC-reactive protein(VS11)陽性所見を示す。

4. 画像所見

肝細胞腺腫の画像所見は多彩で、特異的な所見がないといわれるが、亜型による違いが大きいためである。HNF1α遺伝子不活化型では高度の脂肪化に相当する特徴的MRI所見がみられる。また炎症型は、類洞様構造の拡張やうっ血・出血に相当する特徴的な画像所見がみられる。私どもの経験では、βカテニン遺伝子活性化型がEOB-MRIで等信号を示す一方、他の亜型は低信号を示す。


5. 組織学的問題点

肝細胞腺腫では、腫瘍細胞の異型性が乏しいため、非腫瘍部肝組織を同時に生検し、比較することが腫瘍診断上で肝要である。鑑別診断では、focal nodular hyperplasia(FNH)、FNH様病変、高分化型肝細胞癌との鑑別が重要である。FNHでは、中心瘢痕と分葉状構造、細胆管増生がみられ、免疫染色で、glutamine synthetaseの特徴的な地図状パターン、CK7陽性細胆管の限局的な強陽性所見が特徴的である。高分化型肝細胞癌は、腫瘍細胞と核の密度が増加し、間質浸潤がみられ、免疫染色で、glypican3陽性およびHSP70陽性所見が特徴的である。

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